サンクコストの呪縛 過去の投資に囚われた誤った判断が会社を滅ぼす

スポンサーリンク
この記事は約6分で読めます。

さて、あなたは、映画館に映画を見に行きました。
1,800円払ってチケットを買い、映画がスタートしましたが、どうもつまらない

さて、こんな時、あなたならどうしますか?

  • せっかく1,800円払ったんだから、最後まで見る
  • つまらない映画を見ていてもしょうがないので、さっさと映画館を出る

お金がもったいないから… と最後まで見る人も多いんじゃないでしょうか?
これが サンクコストの誤りです。

「映画が面白くなかったらすぐ出るよ。」という人は、冷静な判断ができる人です。
ここから先を読む必要はありません。

サンクコスト4

これは、ビジネスの世界にも通じる話です。
あなたの会社でもありませんか?

このまま続けてもダメなんじゃないかと思いつつ、
「ここまで来てやめるわけにはいかない」っていう事。

 

スポンサーリンク

お金を払ったかどうかで異なる判断

もし、先ほどの例が、チケットを自分のお金を払って購入したのではなく、
たまたま映画館の前を通りかかったときに配っていたタダ券をもらって見たのだとしたらどうでしょうか?

映画を最後まで見ずに映画館を出る人の割合はかなり高くなるんじゃないでしょうか。

どちらも、「つまらない映画を最後まで見るべきか?」という命題は同じなのに、お金を払ったかどうかで、どうして判断が異なるのでしょうか?

サンクコストの「sunk」は、sink(沈む)の過去形で、
既に回収が不可能になった投資費用の事を指します。

日本語では「埋没費用」といいます。

既に支払った チケット代 \1,800円は、既に支払ったお金です。
映画を最後まで見るか見ないかにかかわらず、もう戻ってきません。

もう戻ってこない投資=サンクコストです。

しかし、多くの人は、既に投資したサンクコストの呪縛にとらわれて、未来の判断を誤ります。

自分でチケット代を払っていないタダ券の場合は、
「最後まで見るのは時間の無駄だから、見るのはやめて、他の事をしよう」
という、冷静な判断ができますが、

自分でチケットを購入した場合は、もったいない」という気持ちが、冷静な判断力を奪い、面白くもない映画を最後まで見てしまいます。

チケット代1,800円だけでなく、さらに2時間あまりの時間までも無駄にしてしまうのです。

サンクコスト7

サンクコストの誤りの典型的な例 コンコルドの開発

コンコルドはマッハ2を超える夢の超音速旅客機として開発がスタートしました。

しかし、騒音がひどいうえ、機体が高価なのに座席数は100席しかなく、燃費が悪いため、
通常の10倍の航空運賃にしないと採算が合わないことがわかりました。

採算が合わないことがわかったにもかかわらず、それまでに投資した予算、時間、労力(サンクコスト)が水の泡となることを怖れ、開発を継続したのです。

結果として、販売台数250機が損益分岐点のところ、わずか16機しか製造されませんでした。

確かに、飛行時間が半分になるなら、10倍の運賃を払っても良いというニーズはあります。

しかし、そんな人たちは世界でもごく一握りの富裕層だけで、
コンコルドを定期便で就航させるほどの数ではなかったのです。

仮に、違約金を払ってでも航空会社からの注文をキャンセルし、開発を途中で中止しておけば、被害は最小限にとどめられたのですが、開発を継続したために、会社はその何倍もの
巨額の損害を出す結果となりました。

このことから、サンクコストの誤りは別名「コンコルド効果」とも呼ばれています

サンクコスト3

身近にもある、似たような例

  • コンプリートガチャ  …せっかく途中まで集めたんだから、全部集めないと今まで使ったお金が無駄になる。
  • ギャンブル …パチンコで3万負けた。あと1万出せば挽回できるかもしれない。ここでやめたら3万が無駄になる。
  • 高価な服やアクセサリー …もう何年も身に付けていないけどもったいないから捨てられない。
  • 食べ放題 …せっかく\3,000払ったんだから、元を取るまで食べないともったいない。

いかがですか? 皆さんも思い当たる事があるのではないでしょうか?

サンクコスト1

 

人は、サンクコストの呪縛だけでなく、始めたことは最後までやり通したい、損したことを認めたくないという心理があり、これをうまく利用したビジネスモデルもあります。

  • デアゴスティーニ …本を最後まで購入すると模型が完成する。 途中でやめたらもったいない。
  • ○○円以上で送料無料 …必要でないものまで買ってしまい、結果的に送料以上の出費をしてしまう。
  • 次回○○円引きの割引券 …割引券を使わないと損、と思い、割引金額の何十倍もの出費をしてしまう。

私自身の体験

実は、私自身も事業撤退の決断をしたこともがあります。

社内で5年かけて立ち上げてきた新規事業がなかなかうまくいかないため、
立て直しのために、私が別の部門から移動して新しい責任者となりました。

しかし、私が事業を精査すると、どう考えても採算が合わない

そこで、まずは、顧客と交渉して商品の価格を2倍近くまで値上げさせてもらいました。
これは、顧客の信頼を裏切る行為なので、本来は絶対にやってはいけない行為ですが、
顧客に受け入れられなかったら撤退するという決意をもって交渉に臨みました。

次に、商品の製造工程を根本から見直して、メンバーとともに不良率原価の低減に取り組みました。

しかし、残念ながら、結局2年半後に私自ら事業撤退の判断をしました

撤退の理由は、一言でいうなら「商品の価格に見合う価値を顧客に提供できない」ということです。

撤退は私にとっても苦渋の決断でした。

新規事業に取り組んでいた部門は解体されてメンバーは別の部署に異動となりました。
部門長だった私も、自分の部門がなくなり、居場所がなくなりましたが、
私に励まされ、懸命に開発に取り組んでくれたメンバーには、申し訳ない気持ちでいっぱいでした。

ただ1つだけ救いだったのは、私が来てから、新規事業の部門の雰囲気がすごく良くなったと担当役員に言われたことです。

本来であれば、私が責任者になった時点で、撤退の判断をするべきだったのかもしれません。
しかし、さすがに他所からやってきた新しい責任者が、やってくるなり、いきなり「撤退する」と言ったら、

「俺はいったい何しにここに来たんだ?」

という思いと、それまで苦労して事業を立ち上げてきた人たちの、

「事業への思い入れ

が判断を鈍らせたのです。

サンクコスト2

冒頭の映画の話

実は、冒頭の例はコミック「インベスターZ」の第二巻に登場するシーンです。

新入生が、投資部のメンバーにふさわしいかどうかテストするため、
先輩が、新入生にわざとつまらない映画を見させます。
途中で出てきたら合格です。

せっかくお金を払ったのだから、最後まで観よう。 途中で出たら損をする。
と考える人は、損切りができない人です。

損切ができるかどうかは、投資家としてもっと重要な資質です。
損切ができない人は、損失をどんどん拡大させてしまう人で、投資家には向いていません。

サンクコスト6

まとめ

ビジネスにおいては過去に費やした経営資源が大きいほど撤退の決断は難しくなります

でも、過去のサンクコストに囚われて過ちを犯さないためには

  • まずは、プライドを捨てて、自分の失敗を受け入れること。
  • そして、今後どうするべきかを、思い入れやサンクコストに縛られずゼロベースで考えること  が大切です。

最後に、私が尊敬する孫正義さんの言葉を紹介しましょう。

退却には攻撃の10倍の勇気がいる。退却の決断はトップしかできない。
退却ではボコボコに非難される、やられる、恥ずかしい。
これに耐える勇気がないと、もう戦えなくなる。

孫正義

コメント

タイトルとURLをコピーしました